「死んでもいいわ」検証

二葉亭四迷が「I love you」(に相当するロシア語)を「死んでもいいわ」と訳したとされる都市伝説の検証。

米原万里『不実な美女か貞淑な醜女(ブス)か』、新潮社<新潮文庫>、1998年1月1日発行、2010年11月20日24刷

不実な美女か貞淑なブスか

第三章 不実な美女か貞淑な醜女か 4 字句通りの舌禍

ツルゲーニェフに『アーシャ』という中編小説がある。(中略)そしてある日主人公はアーシャからの手紙を受け取り、指定された場所に会いに行く。みるからに面やつれしたアーシャは、物怖じした小鳥のように震えながら、彼に「Я люблю вас(I love youに相当)」と愛を告白する。この中編を『片恋』と銘打って本邦初訳した二葉亭四迷は、明治時代の読者を相手にしていたわけで、ここの台詞を「死んでも可いわ」と訳している。 (169~170頁)
巻末の編集部注によると、2006年4月19日に上記に対し読者からの指摘が届けられ、それによると「アカデミー版ツルゲーネフ全集第五巻を購入してАсяを四迷の訳文と対照してみたところ、何とЯ люблю васなどという文章は片鱗もありませんでした。(中略)要するにВаша…というロシア語を『死んでも可いわ』と四迷は訳したのです。」との事(Вашаは英語で言うyoursに相当)。米原さんはこの指摘に対し「『不実な~』を書く際には訳文しか確認しておりませんでした」と返答

著者:望月竜馬、イラスト:ジュリエット・スミス『I Love Youの訳し方』、雷鳥社、2016年12月24日第1刷発行

I Love Youの訳し方

まえがき

日本でもっとも有名な文豪のひとり、夏目漱石。旧千円札の肖像だったことでも知られています。彼はかつて、英語教師をしていました。ある日、生徒のひとりが"I Love You"を「我君ヲ愛ス」と訳しました。すると漱石は「日本人がそんな台詞を口にするものか。『月が綺麗ですね』とでも訳しておけ。それで伝わるものだ」と言った、そんな逸話があります。同様に、小説家の二葉亭四迷が"I Love You"を「死んでもいいわ」と訳した話も、漱石との対比としてよく挙げられます。いずれも都市伝説のようなもので、彼らが本当にそんなことを言ったのかどうか定かではありません。 (2頁)
この『I Love Youの訳し方』という本は、色々な小説・誌・手紙から選りすぐった100通りのI Love Youの出典を紹介する本である。ただ、まえがきで挙げられた夏目漱石と二葉亭四迷については「都市伝説のようなもの」と踏まえた上での紹介なので出典は特に書かれてはいない。
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